新型バブルが発生している? その一
2017-06-25 Sun 09:34
 新型バブルに注目している。
 それを述べる前に、前回のバフルを振り返っておきたい。
 自分が体験した「バブル」がどんなものだったか、実録から始めるのが適当だろう。

 はじめて貸家事業に手をそめたのは昭和五十九年(1984年)だった。
 三十六歳、長男が小学校二年のころだ。

 次の年伊豆に別荘をつくった。
 二軒目の貸家を手に入れたのは翌々年昭和六十二年(1987年)、その翌年(1988年)とそして翌々年(1989年)には賃貸アパートを立続けで建設した。
 自邸をつくったのが平成三年(1991年)四十三歳の時、翌々年(1993年)にはさらに賃貸アパートを建築し、同時期横浜反町にワンルームを投資物件として購入した。

「バブル」を意識していた?
 いいや、「バブル」という言葉さえなかった。

 個人が持つデータベースには限界があるから、限られた範囲であることを断っておこう。
 僕が持っているのは毎年改訂される『朝日キーワード』だ。
 1989年版から2015年版まで備えている。

 現代を理解するためのキーワードを選定し、解説・問題点・展望を見開きページに詳述したものだ。

 『朝日キーワード 1991』(1990年4月20日第一刷発行)に「バブル」はのっていない。 
 手持ち資料の中で「バブル」というキーワードが初出するのは、『朝日キーワード ’92〜’93』(1992年4月20日第一刷発行)からだ。
 それらの間に出版された『朝日キーワード 1992』があるようだが、手持ちのなかにはない。そこに初出しているのかもしれない。

 また、講談社発行『昭和 二万日の全記録』全十九巻(平成三年二月二十八日全巻刊行)の「総牽引」にも、「バブル」の文字はない。

 「バブル」というキーワードはなかった。
 それは「バブル崩壊」によって、バブルが認識され、命名されたのである。

 そこにはこう記されてある。
“バブル崩壊 バブルとはあわのこと。株価や地価が、思惑や投機による取引であわのように膨れ上がったのがバブル現象で、金融引き締めが働いて株価が下がり、地価も上昇が収まりはじめ、含み益(取得時の価格=簿価=と時価との差額)が小さくなり、1990年後半から91年にかけて、実態のないバブルが崩壊を始めた。(以下書省略)”

 失われた20年は、ここにはじまる。
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そしてお友達しか救えなかった、ドリル「国家戦略特区」
2017-06-21 Wed 12:11
 日本は成長する。
 成長できる。
 何かが間違って成長できないのだからそれを正そう。

 幻想はたくましく生きのびてきました。

 「岩盤規制にドリルで穴を開ける。」
 ドリルは「国家戦略特区」です。
 安倍首相もそれを支持する国民も経済成長「幻想」病から抜け出せないのです。

 日本国のGDPが二十年以上にわたって500兆円をうろちょろしている事実を、もう何度も書いたのでいささかウッザリしているのですが、彼も彼を支持する国民も成長幻想を捨てきれないでいます。

変わらない日本

白川メモー成長力の強化のためにー

マイナス金利の原論、段階論、現状論

 500兆円を維持するために、とうとうの借金は1000兆円にふくらんでしまいました。
 今生きている国民のふところは痛みません。
 借金はツケを回してやり過ごそという算段です。

「本来自分がこうむる不利益を他人に押し付ける」のです。
 では他人とは誰か?
 未来の自分、そして子供、孫の世代です。

 その結果は悲惨でしょう。

 基本的には高度成長期で養われた妄想に対して、それが誤った認識であるとは考えていないのです。
 妄想に固執しているのです。

 自分達が「病」気だという認識がありません。
 これまでの政府がうまくやらないからだと思っている。
 安倍政権も基本認識が間違っているのですから、なにをやってもほころびが出てきます。

 加計問題は成長幻想の一産物です。

「美容院はたくさんあって足りているのにナンでまた美容師つくるのかね。」
 たしかに美容院は飽和しています。
 ですが、飽和しているのは美容院だけではありません。

 ありとあるゆる業種、業界、産業で飽和しているのです。
 飽和し密集している所を無理にこじ開け入るしかない。

 足らないものがあればそれを埋めてしまうのが経済の論理です。
 足らない=供給不足ですから、チャンスです。
 では、足りていたらどうするのか。

 加計問題は安倍側近官房副長官が関与したお粗末な結末をむかえています。
 お友達しか救えなかった。
 ドリル「国家戦略特区」は、加計学園に無償で36億円の土地譲渡を引き渡しただけで、断末魔をむかえているのです。
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エネルギー収支比を研究するためのマンダラ・ノート
2017-06-15 Thu 14:51
 そろそろ見取り図を描いておかないと、どこへさまようものか分かったものではありません。
 自分の現状知と「未」知との落差を見える化するためのツールとしてマンダラノートを使っています。
 なにをどのくらい学習するか、研究の対象をどう絞り込むか、見積もっておこうというわけです。

 さて、下記のブログに書いたとおり、エネルギー収支比(Energy Returned on Energy Invested・EROEI)が今一番関心をもっている中核的概念です。

水野和夫『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』をエネルギー収支比から読み解く

 ざっくとしたイメージは「ウサギを捕まえるためのエネルギーが捕まえたウサギのエネルギーより大きいならば、 いくらウサギがいたとしても、インディアンは生きていけない。」と記したとおりです。
 水野和夫氏は、同書P.227「図20 エネルギーの崖」に基づいて、次のように述べています。
(水野氏が掲載した図表は著作権がありますから、氏が作成に利用した原図を代用にかかげておきます。)

「エネルギー収支比のわるいシェール・オイルをあてにするようになったということは、化石燃料に依存する社会が限界に近づいていることを示しています。」


出典=Why EROEI Matters: the Role of Net Energy in the Survival of Civilization

 水野氏はシェール・オイルのエネルギー収支比が2に近いことを指摘していますが、原典には「シェール・オイル」の表示はありません。
 エネルギー収支比の算定には「2〜4」「3〜5」と諸説ありますが、いずれにしてもエネルギー収支比の低いシェールオイルがエネルギー収支比の高い在来型石油からシェアを奪う「シェール革命」の正体は、アメリカの覇権など政治や経済的利害がからむ問題であることはうっすらと見えてきます。
 「化石燃料に依存する社会が限界に近づいていることを示しています。」とだけとは言えないのですが、これはこれでおもしろい問題にしても、僕の手に余ります。

 まずは自分の能力に応じて選択と集中です。
 熱力学を復習しておかないとエネルギー収支比を正確に把握することはできなさそうです。

 そこで、たとえば以前読んだジェレミー・リフキン著・ 竹内 均訳『エントロピーの法則―地球の環境破壊を救う英知』は熱力学の第二法則について次のように述べています。

“熱力学の第二法則、つまり「エントロピーの法則」は、次のように表されている。
「物質とエネルギーは一つの方向にのみ、すなわち使用可能なものから使用不可能なものへ、あるいは利用可能なものから利用不可能なものへ、あるいはまた、秩序化されたものから、無秩序化されたものへと変化する。”

 これに対して、次の指摘がなされています。(以下出典省略)
“"Entropy is disorder" is an archaic, misleading definition of entropy dating from the late 19th century before knowledge of molecular behavior, of quantum mechanics and molecular energy levels, or of the Third Law of thermodynamics.
「エントロピーは無秩序である」とは、分子動態、量子力学、分子エネルギー準位、または熱力学の第3法則を知る前の、19世紀後半のエントロピーの古風で誤解を招く定義です。”
“Defining entropy increase as a change from order to disorder is misleading at best and incorrect at worst.
秩序から無秩序への変化としてエントロピー増加を定義することは、誤解を招きやすく、最悪では間違っている。”
“An unfortunate conflation of the concepts of entropy and disorder has resulted in widespread misunderstanding of what thermodynamic entropy actually means.
エントロピーと無秩序という概念の残念な結びつきは、 熱力学的エントロピーが実際に意味することの広範な誤解をもたらした。”

 そこで、第一の目標は、竹内 薫『ファインマン物理学」を読む 力学と熱力学を中心として 』を基本テキストに再学習に取り組むことです。
 
 そうしたあれやこれやを検討し、下の見取り図=マンダラ・ノートを描いてみました。

Mandala-note:エネルギー収支比(EEROEI)研究の見取り図
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二十六年間手入らずの家の秘密 その三
2017-06-13 Tue 11:11
「屋根材を支え、その勾配を決めているのが垂木(たるき)という部材だけど、言葉で説明するよりは、まずは写真を見てもらうのが早いかな。」



IMG_3088.jpg

「どこで撮ったの。」
「日月で奈良へ行った。修学旅行の復習みたいな、ありきたりのコースだけど、最初の一枚は法隆寺・夢殿の軒裏を撮った。鼻隠しがない。垂木の小口がむき出しで外気にさらされているのが分かると思う。もう一枚は泊まった旅館の軒先をベランダから写したもの。」

「鼻隠しがあるとないとでは何が違うの?」
「雨で垂木の先端がまっ先に腐食するものだから、俗にいう破風板(はふいた)、正確にいえば鼻隠し(はなかくし)という板で小口を隠す工夫がされている。面積で見ればわずかなものだけど、この部分が汚れてはげてくると、ずいぶんとみっともないものだ。」
「わずかっていわれてもイメージできないな。」
「巾が12㎝(0.12m)だとしてその全長が50mだとすれば、6㎡。一般の住宅はその程度だろうね。」

「屋根を見上げてまっ先に気になる部分だね。君の先代は鼻隠しにカラー鉄板を巻いていたね。」
「アパートが初めだったらしい。わずかな塗装作業のために足場を組まないといけないから、メンテが高いものにつくから、お施主様には重宝がられたらしいね。」
「ひと手間かければ後々メンテナンスに苦労が少なくなる。」

「防火性能を考えて石綿板に塗装がごく普通の仕様かもしれないが、そこがまっ先にはげてくるから、家自体がみすぼらしくみえてしまう。」
「これもポイントの一つだね。」
「そう、外壁はサイディングになってから耐久性が向上したから、先に鼻隠しがやられてしまう。ひと手間かければ節約になるし、後々見栄えが違う。」

「どうして手を抜くのかな。」
「積算したとおりわずかな面積だから、建築費全体で見れば微々たるものなんだ。」
「でも、やらない。」
「・・・・・」
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二十六年間手入らずの家の秘密 その二
2017-06-10 Sat 09:01
 友人Kの前回ブログに対する反応はいまいちでした。

二十六年間手入らずの家の秘密

「勾配をきつくすれば屋根の保ちがいいことは分かった。しかし屋根代三割アップだからな。」

 解説が足らなかったようです。
 彼との対話を再現しながら、もう少し突っ込んだ話をして見たいと思います。

「Kさ、屋根工事は建築費全体の何パーセントか分かるか。」
「分かるわけないだろう。」
「そこがウィークポイントになってるんだ!!」

「ところで屋根に特別な設備はあるかい?」
「樋ぐらいかな。」
「そうだろう。空調設備がいるわけでもないし、給排水工事や機器が設置されるわけでもない。」

「なにがいいたいのさ。」
「ずばりいうと、屋根工事は建築費全体の3パーセント、骨組みの工事を入れてもせいぜい5パーセントなんだ。」
「どういうこと。」

「仮に5パーセントとして、それが1.3倍になっても建築費全体に対する影響は1パーセントちょっとなんだ。」
「厳密に教えてほしいな。」
「残りの95%が変わらないとして、屋根工事だけが1.3倍になっても、6.5÷101.5=6.40%。増加した建築費全体で見ても、1.4パーセント増額するだけだ。」

「もう少し具体的にズバリ言ってほしいね。」
「3000万の総建築費だとする。その1.4%は、42万円だ。」
「うーん、微妙・・・」

「で、26年間屋根が手いらずだ。7〜10年毎にメンテナンスすることを考えたら安いと思わない。」
「安いと思うよ。でもさ、その数十万が痛いのよ。大きな買物だからな。」
「屋根の話は分かりやすいからとり上げたんだけど、この考え方を家全体に適用していったらどうだろう。」

「外装に後々手がかからないように、少しずつ工夫するっていいたいんだろう。分かりましたよ。」
「それは一つの例題にすぎない、もっと大事なことは総予算から考えてみることなんだ。」
「いきなり難しい話になったね。」

「自分の家を後々手のかからない、その目的を遂行するためのシステムだと考えてみることだ。」
「快適さと、利便性とか、おれの欲求は多いよ。」
「Kの要求はいったん押さえてみてくれよ。一つの目的に絞り込んで、まずはそれに手をつけてみることだ。」

「外気にさらされている表面、外装だね。人でいえば肌だ。この手当をしっかりやろう。屋根、外壁、サッシュ、破風、水切り、基礎かな。ここに重点的に予算を配分していく。」
「二十六年後なんて想像もできないからな。」
「だから目的をはっきりさせないと、後々手痛い目にあうことになるのさ。」

 Kとの話は長く満足のつづく、古びない、薄汚れない内装の話に移っていったが、それはまた後日。
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二十六年間手入らずの家の秘密
2017-06-08 Thu 13:40
 二十六年前(平成三年・1,991年)に建てた自邸の話、しかも自分の設計ですから、たぶんに我田引水の感はまぬがれないでしょう。
 一種自慢話のようで聞き苦しいかも知れませんが、これから自邸を建てようという方には多少役立つかもしれませんね。

 ポイントは、これまで二十六年間外装をメンテナンスしたことがなかった点です。
 
 外壁、屋根、その他外装に関わる箇所はいまだ補修いらずです。
 一度も手を入れたことがありません。
 必要ないからです。

 汚れた?
 いいえ、見苦しいとか、そろそろといった状態はまったく見当たりません。

 理由は専門的な説明や種々にわたると面倒なので略していえば、たとえば屋根は勾配をきつくして、水はけが良い構造にしています。
 雨水はすばやく樋へ流してやる、実に明快な原則です。
 「そんなことで屋根の保ちが違うの?」と思うでしょう。

 でも違うんです。

 ごくごく略していえば、そうした設計の一つひとつが二十六年手入らずの結果をもたらしています。
 二十六年たたないと実証できなかったのですから、作り手としては二十六年間の実験みたいなものです。
 内装も実はほとんど手を入れてませんが、薄汚れず、古びず、飽きず、しっかり生活を楽しんでいます。

 それらに触れるとブログで扱える文章量を超えますから、屋根に着目して解説いたします。

 一般的につかわれている屋根材コロニアル葺き(彩色したスレートのこと)の屋根は四寸勾配の傾斜でつくられているのが大部分です。
 雨のはけが悪いと、雨水に含まれた汚染物がスレートにしみ込んで、徐々に薄汚れ、防水機能も奪っていきます。

 では反対にどうして急勾配の屋根が少ないのか、考えてみましょう。
 ピタゴラスの定理をつかえば真相はあきらかになります。
 水平距離1m行って0.4m上がると0.4/1で、四寸勾配と称されています(mを尺にかえても同じですね)。

 で、四寸勾配だとピタゴラスの定理から、斜辺の長さは1.077mになります。
 自邸は、10寸勾配ですから、√2=1.414mです。
 斜辺が四寸勾配に比較して、31%増えますから、それに比例して屋根面積も増えます。

 屋根材だけではありません。
 屋根を支える骨組みもそれに比例します。
 工賃とか断熱材等々もろもろ三割アップいたします。

 建築費は大きな金額ですから、屋根にそれだけ配分するよりは、黙って一般の勾配で「支障なし」といたすわけです。
 二十六年後のことなど誰も考えていません。 
 ちなみに破風や水切りには腐食に強い亜鉛鉄板を使い、どこも痛んでいません。

 で、外装は今日まで手入らずであるわけです。

 ところが、今回はじめて外装面の一部にトラブルが生じました。
 雨戸の開け閉めがきらいだったこともあり、数カ所に電動シャッターをつかっています。
 この一つが動かなくなりました。

 二階の物干で使っているベランダの掃き出しで、不用心ですし、就寝するには外の灯りがジャマになって寝付けません。

 そこでメーカーであるトーヨーサッシ(LIXIL・リクシル)に修理を依頼しました。

 関心しました。
 電話番号一つでクライアントの情報がディスプレイ表示されるのでしょう、住所、氏名などという面倒なやり取りは一切ありません。
 使用している機種も登録されているようです。

 その後のやり取りもシステム化されていて、クライアントに負担がかからならない工夫がきっちりされていました。

 お約束の五時ぴったりに担当者が来て、さっそく点検そして補修工事です。
 その間約四十分でしょうか。
 点検の結果、故障箇所と保守方針と費用が告げられます。

 簡潔で、それでいてぞんざいでなく、申し分ない対応でした。

 「ステンレスベルトが切れシヤッターが動かなくなっています。」
 ああ、部品の発注で数週間先延びになるのかと思いきや、部品を積み込んでいて、すぐに交換工事に着手です。

 システムがしっかりしていると関心し、お支払いです。
 その前に電子機器の劣化状態の説明、その場合の新しい電子機器の説明が捕捉され、機械部分の今後の問題点も教えていただきました。
 スマホでしょうか、タブレットにサインするとワイヤレスで持参した小型のプリンターが領収書を印字。

 システム化されたLIXILのメンテナンス部門には関心いたしました。

 家もシステムと考えると、どこにお金をかけるのか、という問題は長寿住宅の大きな要件であることが見えてきます。

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やりたいことはあるのに方法が見つからないって、誰だ?
2017-06-06 Tue 16:57
 なにをやるにしても、方法論がネックになって進まない。
 よくあることだ。
 汎用性のある方法はたいていが役に立たないし、専門的な手法は身につける頃には目的を見失っているものだ。

 足踏みするだけでは一歩も進まない。

 そのうち人生は腐っちまう。

 ピーター・シムズ『小さく賭けろ!』( 日経BP社・2012/4/5)は普遍的な方法論を提示している。
 ‘Little Bets’だ。
 「小さく賭けろ」って、株式投資のドルコスト平均法とカン違いしそうだが、小さく賭けて小さく負ける。

 これがポイントだ。
 要約すると以下のとおりになるが、解説しよう。

“アプローチの核心をなす「Little Bets/小さな賭け」とは、具体的かつ即座に実行可能なアイデアを発見し、テストし、発展させていくことを指す。これによって獲得した小さな勝利を足場に、これを積み重ねる創造的プロセスによって、創造物を「つまらない」から「つまらなくない」へと変える。”

 これだけでは見通しが悪いだろう。
 彼の書き出しを見てみたい。
 登場するのは、スタンダップ・コメディアンのクリス・ロック(Chris Rock)だ。

 下段のYouTube。
 「ぼけ」と「つっこみ」の一人二役、一人漫談だ。

「コメディアンのクリス・ロックは大舞台でみせる十八番の芸は、それまでに彼が小さな舞台で試した無数の失敗の上に成り立っている。」

 小さい劇場やバーで、ネタを何度もかけてみる。

「今度のネタは一人も笑わない。」
「反応がない。」
「少し手答えを感じた。」

 観客の反応を確かめ、修正に修正を重ねる。
 ‘Little Bets’がやがてネタを磨き上げて行く。
 大舞台に掛けるときには「完成品」が見られるっていう寸法だ。

 彼はこんな言い方もしている。

「成功した起業家の大半は、普通の人なら「失敗」と考えるところを彼らは「学習」と考えるのだ。」
「小さく賭ける場合、われわれは成功を夢想する必要がなく、失敗を予期し、許容できる。」
「早く間違えれば、それだけ正しい回答を得るのも早くなる。」

 そう、「小さな勝利は、不確実性の中にある前進を助ける足場」のようなものである。



[目次]
第1章 「大きな賭け」対「小さな賭け」
第2章 成長志向のマインドセット
第3章 素早い失敗、素早い学習
第4章 遊びの天才
第5章 問題は新しい答え
第6章 質問は新しい答え
第7章 大から小を学ぶ
第8章 小から大を学ぶ
第9章 小さな勝利
第10章 あなたの「小さな賭け」
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堀江貴文『多動力 Kindle版』、空想から多動力へ
2017-06-05 Mon 17:19
 堀江君は多動力を定義していないから、読者は彼の書いていることから、想像をめぐらすことになる。
 あわせて、ライブドア時代、出所後の活動から彼のいっていることに空想をめぐらす。
 たぶん「いくつもの異なることを同時にこなす力」という輪郭はつかめても、その具体的な力の根拠、方法論等々はそうしたことを寄せ集めて推察するしかない。

 1.インターネットがすべての産業を横串で刺し、あらゆる仕事の基幹システムとなった。
 2.すべての産業が「水平分業型モデル」となり、結果“タテの壁”が溶けていく。
 3.あらゆる産業のタテの壁が溶けていく、かってない時代に求められるのは、各業界を軽やかに越えていく「越境者」だ。

 実際彼は越境者だった。

 異なった分野の企業と企業を“横串で刺し”、IT企業のビジネスモデルを生み出した。

 それを生き方にまで発展させれば、多動力ということになるだろう。

 具体的には、「人生でやることのリスト」から、掃除とか服選びとかは全部捨てて、アウトソーシングを完了するだとか、
「付き合わない人」なども明確にすることなどだ。
 一日二十四時間を楽しみきるために「人生でやることのリスト」からも「やらないこと」を明確に外す。

 箱根から帰りのロマンカーで、ダウンロードした『多動力 Kindle版』を数十分で読んだ。
 スカスカの本は書き込むこともないし、読返すこともないからKindle版に限る。

 僕にとっても多くの読者にとっても、多動力は空想の中でしか機能しないだろう。
 彼にとって機能しないのではない。
 彼はそう機能し、そう生き方を選んでいるということだ。
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成長できない国の悪夢、国家戦略特区は当初から破綻している
2017-06-03 Sat 09:52
 日本は成長できない国になった。
 1994年以降、名目GDP500兆円をうろちょろしている。
 成長しない、成長できない国なら、それを前提に国家運営を考えなければならない。

 ところが「国家戦略特区」は正反対のこまった思想で成長をごり押しした。
 アベノミクスの成長戦略はボロボロなのに無理強いした。
 これが破綻し、失敗したのは必然だ。

 成熟した分野に手をつっこんだ。
 成長を妄想した。
 当然こじれにこじれ、森友、加計学園問題が発生した。
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水野和夫『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』をエネルギー収支比から読み解く
2017-05-31 Wed 12:24
 『100年デフレ』以来、水野和夫氏の著書はすかさず読んでいます。
 それで論理のクセであるとか、理論的な理解とかもあって、何を言おうとするのか先が読めます。
 ですが、はじめて接した読者は資本主義史、歴史観、利潤=長期金利の関係など難解に感じることでしょう。

 そこで、最近著の『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』の読書ガイダンスを、自分の理解を深めるためにも書いておきたいと思います。

 最終の第六章「日本の決断ー近代システムとゆっくり手を切るために」から読むのも良いと思います。
 
 キーワードは「ラビット・リミット」です。
 エネルギー収支比のことですが、“Rabbit limit”でイメージしたほうが分かりやすい。

「ウサギを捕まえるためのエネルギーが捕まえたウサギのエネルギーより大きいならば、 いくらウサギがいたとしても、インディアンは生きていけない。」

 こういうことです。
 大戦後先進国は、自噴する石油を安価(1バーレル=2$前後、現在50$前後)で手に入れ、こうした化石燃料エネルギーによって経済成長をとげます。
 これだと、一単位のエネルギーを投入して、一〇〇単位のエネルギーが得られます。
 エネルギー収支比は一〇〇ですね。

 ところが1973年(第1次)に起こったオイル・ショックで、先進国には安価な石油が手に入らなくなります。

 これにかかわる歴史は省略しますが、これ以降Rabbitをつかまえるのに手間ひまを掛けなければならなくなります。
 今日さわがれているシェール・オイルは一単位のエネルギーを投入して、二単位のエネルギーしか手に入りません。
 化石燃料に依存した経済社会が限界に近づいているのです。

 エネルギー収支比は二ですね。
 エネルギーの一は掘削するために使い果たしてしまいます。
 残る一が正味手に入るエネルギーです。

 2010年に発生したメキシコ湾原油流出事故でそうした現状がいっそう明瞭に見えてきます。
 BP社の石油掘削施設「ディープウォーター・ホライズン」は、メキシコ湾沖合80km、掘削地点水深1,522mの海上に設置されていました。
 大水深の海底をリグ(掘削機)で掘削し、石油を吸い上げるのですが、そのための掘削パイプは5,500mだったと言われています。

 大変なコストをかけないと、Rabbitをつかまえることはできないのです。

 第六章を理解したうえで、第1章にもどりましょう。
 『「国民国家」では乗り越えられない「歴史の危機」』です。
 ここでのキーワードは、「交易条件」です。

 「交易条件」は、輸出物価を輸入物価で割った指数ですから、分母の輸入物価がふくらんで負担が多くなれば、数字は小さくなりますし、それは「交易条件」悪化の一途を示しています。
 実際今日、石油価格は多少値下がりしたとはいえ、それでも石油ショック以前の25倍です。
 先進国の経済成長は鈍りはじめ、今日ではほとんどゼロ成長に近づいています。

 先進国は成長できなくなった。
 経済が定常状態に陥ります。
 彼は、日本が先頭を切った「ゼロ金利」「ゼロ成長」に先進諸国が次々と陥っていく現象を総括して、「新しい中世」と読んでいます。

 エネルギーの限界からまずは見通しを立ててから、彼の歴史観に接近するのが分かりやすい道かも知れません。
 が、これはあくまでも私感です。
 なにより一読者として、水野和夫氏の著書を多くの人に読んでほしいと思っています。
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