すぐそこに目に見えてきた未来ー人口減少のことー
2012-11-09 Fri 09:59
昭和51年(1976年)に堺屋太一が発表した小説『団塊の世代』は、日本の経済社会の未来描写において抜群の的確さ、精度を保ってきた。
今もなおその射程内にあるといってもいいだろう。
一昨年ベストセラーになった藻谷浩介『デフレの正体 経済は「人口の波」で動く』もその系譜にある一書だ。

「あとがき」に、論旨が要約されてある。
「経済を動かしているのは、景気の波ではなくて人口の波、つまり生産年齢人口=現役世代の数の増減だ。」
補足すれば、経済の主要な流れを決めていくのが人口の波である、という立ち位置が明確で、それについてはあいまいさはない。

あれもこれもと要因を言い立てれば、かえって大きな方向性が見えにくくなる。
まずは人口減少から見ようというのが眼目だ。
このところ日経新聞は人口減少の問題を正面からとりあげている。

A.(歴史と思想に学ぶ)「気概」損ねる人口減少 猪木武徳氏(2012/11/5付)
B.(人口減社会を考える)(上)「標準家族」の維持は困難 山田昌弘 中央大学教授(2012/11/7付)
C.(人口減社会を考える)(中)少子化前提に発想転換を 松谷明彦 政策研究大学院大学名誉教授 (2012/11/8付)
D.(人口減社会を考える)(下)高齢化の「重荷」軽減が急務 小川直宏 日本大学人口研究所長・教授

それぞれ肝の部分を以下に抜き書き、引用した。
赤字が現状(問題)、青字が方策(処方箋)。
人口減少は年々加速し、29年後には年間100万人を超えると推計されている。

毎年100万人の有効需要が減っていく社会。
未来は見ようとしなくてもいやおうなく迫ってくる。
ごまかすことなく真正面から見つめ直したい。

A.
“ケインズは(中略)。人口の減少局面で繁栄を維持することがいかに困難かを指摘したのである。人口減少によって有効需要が低迷する結果、「失業の悪魔」(devil U)が忍び込むというのだ。この「悪魔」はマルサスの「人口の悪魔」(devil P)と同類だとケインズは言う。「人口の悪魔」はいまや鎖でつながれたものの、人口の減少期には「失業の悪魔」が暴れ出す可能性があると警告するのである。
 ケインズはこの「悪魔」に対抗するには、所得の不平等を是正して消費を増やし、利子率を低くして生産期間が長くなるような投資を促す政策が必要だと説いた。さもないと、資本主義社会は労働などの資源が使われないまま慢性的な不況に苦しむと考えたのだ。社会が再配分政策の方向に動かない限り、現行システムの下で自由と独立を謳歌することは困難になるというのがケインズの診断であった。”

B.
そして今後、標準家族を形成・維持できなかった人々が年をとり、徐々に中高年に突入するというのが、日本の人口減少社会の姿である。
 標準家族を形成・維持できない人たちがつくる家族形態は、多種多様である。一人暮らし、ひとり親、離婚して子連れで親元に戻るパターンも増えている。独身主義者で高収入の一人暮らしの人もいるだろう。
 将来、子どもを持たずに高齢に達する人が3割から4割に達したときに、どのような社会になるだろうか。きょうだいも少なく、頼る親戚もいない、経済基盤もない孤立した高齢者が町にあふれる可能性が高い。いずれは家族格差が顕在化するのである。(中略)
 今の社会保障・社会福祉制度、雇用慣行などは「標準家族」をつくれることを前提に構築されている。しかし今後、標準家族を形成・維持できる人は少数派に転じる。親同居未婚者の雇用対策はもちろん、引きこもりがちな彼らを地域に関わるように仕向ける政策が必要だろう。

C.
高齢化が急速に進行する時代には、国民1人あたりの財政支出をおおむね横ばいとしない限り、増税で財政収支を改善することはできない。1人あたり国民所得がおおむね横ばいとなり、1人あたり税収もおおむね横ばいとなるからである。(中略)
際限ない増税地獄となり、遠からず財政は崩壊する。政府は頭の切り替えが必要だろう。1人あたり財政支出の傾きを国民所得の傾きと同じにすることが、人口減少時代に必須の財政規律なのである。(中略)
 現状は放漫財政といってよい。巨大な官僚機構に加え、財政の支出ルートに膨大な団体・企業が絡んでいる。それらを整理し、国や自治体から出たお金が本当に必要なところにだけ届くようにする。また政府の調達価格は「官庁価格」と呼ばれ、民間の取引価格よりはるかに高い。これを公正な競争で民間並みの価格にする。それらだけで現在の単年度赤字のかなりの部分が解消する。さらに合理化に努めれば、現時点で財政収支を均衡させ、今後の1人あたり財政支出を横ばいとすることも不可能ではない。そうすれば増税の必要もなくなる。”

D.
“高齢世代から子供世代・孫世代への経済支援パターンが出てきたのはバブル経済崩壊後の94年以降で、この傾向は今も持続している。高齢者は年金受給者なので安定した収入があるのに対し、成人した子供世代はリストラなどで失職することがあり、高齢者が政府に代わってセーフティーネット(安全網)の役割を果たしている。(中略)
09年の結果によれば、96年に第一次人口配当が消滅、働き盛り世代の減少が成長を押し下げる「人口オーナス(重荷)」の局面に入っている。09年におけるオーナス状態をこれ以上悪化させずに現状を維持するには、(中略)年齢ごとにみた労働所得のピークは51歳だが、高齢化の進行によるオーナス状態の悪化を避けるために、これを52歳、53歳というように右へ平行移動させるような労働政策を実施しようというわけだ。計算によれば、53年までに労働所得のピーク年齢を9歳右(60歳)にシフトできれば、44年間はオーナスの悪化を避けられる。”
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