『日本の地価が3分の1になる! 』書評
2015-05-08 Fri 09:09
それは、なだらかに衰退していく日本の姿の一つを表しているのだと思います。

三浦 展・麗澤大学 清水千弘研究室共著『日本の地価が3分の1になる! 』には巻頭にカラー刷り地図が31枚、本文には図表が58枚と写真や略図がびっしり埋め込まれてあります。
資料は豊富ですが煩雑で、タイトルにひかれ手にしたものですから、まずもってその根拠が知りたい。
過激なタイトルの根拠とした記述はP.52になって、はじめて出てきます。

その段落を全文引用します。

“全国の住宅地の公示価格基準地点の地価と現役世代負担率の相関関係を清水が試算したところ、このまま現役世代負担率が上がり続けた場合、日本全体の地価を2010年から2040年にかけて毎年平均3.18%、30年で62%押し下げる効果をもつ。(試算の詳細については第2章参照)つまり、100万円の土地が38万円になる。ほぼ3分の1になるのである。”

つづめるとこうなります。

毎年3.18%下落つづけたら地価はいくらになるか?

分解してみます。
1.分析手法  全国の住宅地の公示価格基準地点の地価と現役世代負担率の相関関係
2.期間    2010年〜2040年

相関関係がミソです。
現役世代負担率が予測される地価下落の直接的な原因であるかどうかはわかりません。
統計的になんらかの関係がありそうだ、なら確かめてみよう。

そういうことです。

現役世代負担率のデータ(値)が変化すれば、全国の住宅地の公示価格基準地点の地価の値も変化します。
2つの値の関連性は、前者が独立変数(説明変数)、後者が従属変数(被説明変数)です。

まず、独立変数(説明変数)である現役世代負担率のデータの信頼性がポイントになります。
これは、「65歳以上の老年人口1人を15歳から64歳までの生産年齢人口何人で扶養するかを表したもの」です。
そこで算出の基礎になる公的な人口統計は、既成の公表数値がそのまま様々な分析・研究に用いられてきた実態から、高い信頼性があります。

ですから現役世代負担率の将来にわたるデータの狂いを心配する必要はなさそうです。
過去から積み上げられたデータを未来に延長しても問題はなさそうです。

さて、従属変数(被説明変数)はどうか。
0年以前の地価の変化を延長して、相関関係(係数)を計算させる訳です。
この場合にも、過去は未来と同一だと仮定をおかなければならない。

けれど人口動態の信頼性に比べ地価の変動には不確定要素が多い。

ですからこうして計算された「毎年平均3.18%、30年で62%押し下げる効果」に疑問符がつけられるのはしかたがないでしょう。

しかしながら問題は「平均下落率3.18%」の正確性にはないと感じています。

なだらかな曲線は、マイナス複利がきいていくる、日本の衰退を語っているからです。

たとえば公的年金に導入されたマクロ経済スライドがその代表的なものです。
現役人口の減少や平均余命の伸びに合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組みです。
難しい説明は省きますが、年金という「預金通帳」から「スライド調整率」が差し引かれていくシステムです。

つまり、マイナスの複利が「付く」わけです。

売らんがためのタイトルでしょうが、人口動態から見た日本は確実に衰退を予言しています。
地価が除外(例外)されようはずがありません。
なだらかな衰退にある日本ですが、それを数学的に表現するのはムダではないでしょう。

その事を自覚するには役に立つ本だと言えそうです。

【目次】
第一章 超高齢社会における地価の下落
第二章 人口と地価の理論
第三章 生産年齢人口の減少を埋めるのは外国人か高齢者か?
第四章 東京主要駅周辺の現状と未来
特別座談会 不動産価格下落を防ぐ処方箋 島原万丈×清水千弘×三浦展

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