スポンサーサイト
-------- -- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
別窓 | スポンサー広告 | ∧top | under∨
鉄条網のないアウシュヴィッツと化した人類最古の都市エリコの原罪
2015-03-18 Wed 13:32
100ページ足らずのブックレットだ。

Neanderthals, Bandits and Farmers: How Agriculture Really Began (Darwinism Today series)

コリン・タッジ著に竹内久美子は次のような日本語タイトルを付けている。
『農業は人類の原罪である(進化論の現在)』
ベタに訳せば「ネアンデルタール人、ならず者そして農民ー農業は本当のところどのように始まったかー。

農業=人類の原罪?
いいタイトルだと思う。
しかしそれを説明するだけでも、ブックレットではすまないだろう。

100ページですませているから、かえって消化不良を起こす。
内容は濃いが、ぶっきらぼうな本だ。

旧石器時代、ホモサピエンスは狩猟・採集によって食糧を得ていた。
彼らだってちょっとした「原農業」はしていた。
「原農業」は次のように表現されている。

horticulture(園芸)実のところgardening(庭いじり)
ちょっとしたcuttage(挿し木)のような簡単なcultivation(栽培)
放し飼いと大差のないpasturage(牧畜)

これらとagriculture(農業)はどこが違うのか。

わずか約一万年前のことだ。
わずかというのは尺度によって異なるだろうから、それぞれメジャーを当ててみるといい。
はじまりのはじまりである138億年前ビッグバンをメジャーに測れば、138,000分の1。

46億年前地球誕生
40億年前原始生命誕生
200万年前から紀元前8千年の長い旧石器時代( Pal(a)eolithic Age)

レバント (Levant/シリア、レバノン、ヨルダン、イスラエル、およびパレスチナ自治区を含む地域)のJericho (エリコ)に最初の農業革命が起こる。

現在のヨルダン川西岸地区。
パレスチナ自治区だが、イスラエル軍の許可がなければ通行一つできない。
イスラエル入植者が入り込み、虫食いのようにイスラエル支配が浸潤する、ある人の表現を借りれば「鉄条網のないアウシュヴィッツ」。


ヨルダン西岸.wikipedia
出典=ヨルダン川西岸地区

比喩としての「鉄条網のないアウシュヴィッツ」をイメージとして借りよう。

長時間の作業を必要とする点で、狩猟・採集から農業への移行は決して自然ではなかった。
農業は狩猟・採集に比べて重労働だ。
タッジは旧石器時代は栽培も狩猟もpart timeでやっていて、full time(フルタイム)の労働ではないことに注意を促す。

“しかし、彼らは農業を好んではいなかった。ひどく嫌っていたとすら考えられる。創世記も事実雄弁に語っている。アダムとイブをエデンの園から追放するときに、神はこう呪いの言葉をかけるのである。「お前が土に還るまで、顔に汗することなくパンを得ることはできないだろう」(創世記三章十九節)少なくとも欽定訳聖書にはそうある。この「顔に汗して(sweat of face)」という表現はすさまじい。”[同書 P.72]

創世記第四章二節、土地を耕す者カインと羊飼いのアベルの物語に神は次のような決着を与えている。
「そして主はアベルとその供え物は顧みられたが、カインとその供えものは顧みらなかった。」
神が与えたもうた土地を破壊する農業は冒涜であり、しもべである人が背負ってしまった「原罪」なのである。

タッジはユダヤ教の聖典である『旧約聖書』をさらに引用し、次のように述べている。
“出エジプト記に記されているところによれば、イスラエル人がエジプトで行った農耕は文字どおり奴隷労働である。(中略)聖書に書かれた時代には、農耕はおそらく、牧畜に比べてはるかに「暴力的」なものとみなされていただろう。農耕の方がはるかに大きく直接大きな影響を環境に与えるからだ。”[同書 P.21]

農業が人にとっては奴隷労働であり、環境には大きな影響を、つまりは自然破壊であることを明らかにする。

イメージしにくいが、狩猟・採集は「資産」をうまない。
余剰生産物をつく出す農業は、人類にはじめての「資産」をもたらした。
また狩猟・採集社会のpart timeが生産性が低いから余裕がなく、full timeより自由がなかったというのもたぶん錯覚だろう。

農業に依存するにしたがい、こうした過程は不可逆的になっていく。
資源を効率的に利用し、「技術革新」への有効な誘因がはたらく。
人類が農業を出発点に発見した人と自然に対するコントロールは、加速度的に発展し、もはや引き返せない「原罪」の道をすすんでいく。

その道をどう捉えるか。
排他的財産権の成立を促し、過酷な管理と支配による「鉄条網のないアウシュヴィッツ」がつくり出された・・・と見ることができる。
いいかえれば自らを組織化することで、経済社会を管理運営する道を選択した。

この本のユニークな視点で一万年前につくられた仕組みの本質が何であるか、振り返ってみるのも新鮮な追認体験になるだろう。


農業は人類の原罪である (進化論の現在)農業は人類の原罪である (進化論の現在)
(2002/10/17)
コリン・タッジ

商品詳細を見る
関連記事
スポンサーサイト
別窓 | 読書趣味おしゃれに旅健康 | コメント:0 | トラックバック:0 | ∧top | under∨
<<母、九十の春のビギナーズ体験 | 三保小次郎日誌 | 縄文土器の魅力ー科学技術と純粋芸術の二重性ー>>
この記事のコメント
∧top | under∨
コメントの投稿

管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
∧top | under∨
| 三保小次郎日誌 |
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。