三島由紀夫『蘭陵王』龍笛独奏
2014-12-27 Sat 14:27
『豊饒の海』を読んだのははるか四十数年も前だ。
大学紛争が鎮火し、就職したその年の11月25日、三島由紀夫は陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地で割腹自決した。
僕は若くて空虚で、みずからの空洞をのぞき込んだようで、この人は行き詰まっているのではないかと感じていた。

『蘭陵王』は前年、群像 11月号に掲載されている。
ともに自決した森田必勝(もりた まさかつ)が第二代学生長を勤めた楯の会の軍事訓練を描いている。
伊豆箱根鉄道の車中、友人のスマホに耳を当てYouTubeの「【雅楽】舞楽蘭陵王 龍笛独奏」を聞いた。



“するどい序奏は、嚠嚠と耳を打つ高音ではじま”り、文字を追う気力がうせようとする。
旅の手慰みのつもりで持ってきた文庫本。
光沢のある横笛がおおいつくすことのできない、文字の不可侵性がやんわり立ち上がってくる。

“私は爪のわきの小さな笹くれに、ヨードチンキを塗った。ほかに塗るべき傷はなく、痛みもなかった。肉体は銃器のように細心に管理されていた。要するに私は幸福だった。”

富士ふじ

行軍と陣地攻撃。
匍匐前進や突撃訓練。
広大な富士のすそ野が汗を、血を、思想を、すべてをのみこむ。

美貌を隠し仮面をつけて戦った悲劇。
蘭陵王の愛。
風呂から上がると宿の縁側の真っ正面に富士が蕭然と立ち上がっていた。
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