2016-02-27 Sat 17:15
ぼくたち(の多くが)は日頃から宗教を関係のない、関係を持ちたくない存在としてふるまっている。
そもそもそれを前提に問題を突き詰めることなど考えも及ばない。 この間のぬけた無前提は、トランプ氏の合衆国大統領の可能性すら笑い事ですまそうとする。 ドナルド・トランプは「歯に衣着せぬ発言」「過激なイスラム攻撃」でキワモノの扱いを受けている。 「あんな人が大統領!!!」というのが多くの日本人の受け止め方だ。 マスメディアの「知性」達もそろって眉をひそめ、否定的な論調をふりかざしている。 しかし、そうだろうか。 なぜ彼は共和党候補者予備選で三連勝したのか、理由の説明にはなっていない。 はたしてこの「反知性的」候補者はスーパー・チューズデーに消えて行く泡沫候補だろうか。 宗教を、ぼくたちには関心(関係)ないことだと排除し、それを無前提に済ましている。 しかし、そのことによって見失ってしまう何かが残される。 そうした過ちは自分たちの思考回路にあるとは考えず、馬鹿げた男が馬鹿げた理由で勝ち続ける。 そんなバカげた論理でしか、問題を捉えられない。 ぼくたちにそれは見えないのだから見えず、見えないから無視する、でいいのだろうか。 佐藤優氏はインテリジェンスを「探り当てる」と規定する。 何を「探り当てる」のか。 橋爪大三郎・佐藤優共著『あぶない一神教』は、そうしたぼくたちの弱点の危うさ、問題の根っ子を捕捉するヒントを与えてくれる。 たとえばこうだ。 「キリスト教者23億人。イスラム教徒16億人。彼らのルールを知ればすべてがわかる。」(本の扉、宣伝文句) 「アメリカは宗教によってつくられた国です。」(佐藤、P.110) 「アメリカでは三〇%から四〇%の人々が毎週日曜日に教会に行っていると思われる。キリスト教徒であると自認し、イエス・キリストは“神の子”で、復活し、やがて再臨し、最後の審判はあると信じている。」(橋爪、P.116) 「いま、アメリカやヨーロッパはイスラムとの併存を否定し、棲み分け、封じ込める方向に進んでいます。」(佐藤、P.134) 橋爪は十数年前、一年ほどのアメリカ留学での体験を語っている。(橋爪、P.131) “アメリカでも、キリスト教徒は決して口には出しませんが、ムスリムに対して秘かな違和感を抱いているのは事実だと思う。(中略)そんなあるとき、何かの拍子でイスラムの話題が出た。しかし話題が続かず、ずぐ途切れてしまった。よく観察してみると、かすかに表情を歪めるひともいた。それが私には、アメリカのキリスト教徒が平均的に持っている、イスラムに対する抵抗感のように見えました。”
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