2015-07-30 Thu 14:39
山崎 元、水瀬ケンイチ共著『全面改訂 ほったらかし投資術』、前作から5年全面改訂版が出版された。
まえがきにこうある。 “この本で推奨した「国内株式」50%、「先進国株式」40%、「新興国株式」10%の組合せに、10年末をスタートに15年3月末まで投資していた場合の運用資産の増加を現実の投信に投資していたとして計算すると、95.1%になりました(複利年率では17.0%です)。” この「実績」をどう評価したらよいだろう。 批判的に検証してみたい。 1.経済成長率との比較 この間、日本経済の成長率は2010年4.65%、2011年-0.45%、2012年1.75%、2013年1.61%、2014年-0.06%と推移している。 細かい数字は省略するが、ローレンス・サマーズが指摘する長期停滞仮説にあるように、先進国経済は低成長にあえいできた。 新興国も一時の勢いを失い、主導していた中国経済の停滞が明らかになっている。 経済成長の果実を株式投資によって収穫するのであるから、経済成長とかい離したキャピタルゲインの上昇に疑問をもたなければならないだろう。 統計学でいう、経済成長の果実へ株式利ザヤが平均回帰するメカニズムが狂っているのである。 なぜか。 2.中央銀行バブル 中国のPKOを笑えない。 1992年宮沢内閣によって始められたPKO(株価維持策)は今日世界中の中央銀行が推し進めている。 米国FRBの量的緩和政策(QE1、QE2、QE3)、さらに欧州中央銀行の量的緩和政策。 中央銀行バブルによって、世界経済は低成長でありながら、株高をつくり出す。 いずれ平均へ回帰するのであれば、崩壊はまぬがれないと考えるのが妥当だろう。 3.長期保有という幻想 同書の提唱するインデックス投資は、常に資金を市場に置いておくことが肝要である。 タイミングをはかって投資するのではなく、機械的に積み立てるなど市場の動向に左右されない投資スタンスを理想とする。 市場に資産をさらしておく(エクスポージャー)のである。 同書は、何かあった時のための二年分の生活防衛資金を運用に回さないお金として確保するよう警告している。 しかし、それで足りるであろうか。 キャッシュポジションもまたポジションである事は、いかにも高度な投資技術の範疇にあるためか、説明は省かれている。 生活実感、実態とかけ離れた株式市場にきな臭いにおいをかぎ取る普通の感覚が忘れられていると思うのである。
スポンサーサイト
|