今日M社が廃業した。
昭和三十七年開業の建具屋さんだ。
二升ぶらさげ、長年のお礼にうかがった。
看板は外されてあった。
鉄骨の枠だけが残されていた。
Yさんがいた。
七十を超えただろう。
僕を見ても最初は分からなかった。
「お酒は相変わらずですか。」
「やってるよ。」
内業の担当だから、会うのは四十八年ぶりだ。
Hさんは外回りで出かけていた。
二人には僕が高校のとき網戸張りのバイトでお世話になった。

三十二で建築業界にはいって、はからずもずっとお世話になることになった。
バイトは昭和四十年の頃だから、まだ若い会社だった。
二人も僕も若かった。
「拝啓」ではじまる手紙が来ていたが、今日までうかがえなかった。
代表のIさんは当時からおやじ風で、今も変わらない。
つまらない図面を引いて建具を造っていただいたが、それももう昔のことだ。