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絶対不平等感覚
2012-09-02 Sun 15:20
それは貧困の問題です。

「格差」という色眼鏡をつけるから肝心なことが見えなくなるのです。

山本周五郎の『季節のない街』に、「倹約について」という一節があります。
(黒澤明監督作品『どですかでん』の原作です。)


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“塩山一家の生活は、時計の針のようにきちんとしていた。慶三の出勤時間、帰宅時間、娘たちの登校時間と帰宅時間、食事、入浴も物差しで測ったようにきっちりときまっていたし、・・・”
“買ってきた食品は徹底的に使った。大根の葉はいうまでもなく、人参の葉から尻尾、ジャガ薯の皮や、芹、三つ葉の葉の根、蕗の葉まで捨てることはなかった。・・・”
“(郵便局で預金をしている塩山一家を見つけた長屋のおかみさんがショックを受け、交わした会話)
「このご時世に貯金とは」と他のかみさんがいった、「世の中にはとんだ罰当たりことをする人がいるもんだね」”

この一家は、風の吹きだまりに塵芥が集まるようにできた貧民街の中では、例外的な存在です。
ために「なにか悪い病気持ちかなんぞのように、近所づきあいからそれとなくはずされたようであった」し、
家族は次々と結核で倒れ亡くなっていくという悲惨な話ですから、作者も「好意的」に書いているとは言い難いものがあります。

死の床にあって一家を主導していた妻るいに作者はこう言わしています。

“「あたしは間違っていたかもしれないね」死ぬまえにおるいは亭主にそういった、「一日一円の貯金は一家の繁栄って、貯金のない家には将来なし、なんていうことを信用していたのよ」”


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この町の価値観、現実感に共感は感じない、それが多数派でしょう。
むしろ相いれないのですが、排斥された塩山一家の「常識」が成立しない世界があることも確かです。
現に「貯蓄を保有していない」世帯が31.9%(金融広報中央委員会「家計の金融資産に関する世論調査 2011年10月」)あるのですから、貧困化がすすんでいる実態ははっきりしています。

「格差」社会論は様々な意図や意識、現実を含み込みながら、あいまいなまま流通しています。
一つの分水嶺が、「貯金のない」という稜線にあることは確かです。
山本周五郎が描いたように、貧困とはなにか、明晰に認識することができるからです。

ロバート・G・アレンは『億万長者入門』のなかで、次のように述べています。
“お金の価値を認識し、それをコントロールし、蓄えるという3つのマネー・スキル(money skill)は、あらゆる経済的成功の土台となるものである。”

あるいはトマス・J.スタンリーが『となりの億万長者 成功を生む7つの法則』で実証したように、資産は収入の大きさで決まるのではなく、収入と支出との差額から生まれるのですから、マネー・スキル、あるいはこのスキルを裏付ける家庭の「しつけ」、「道徳」がカギになります。
貧困はこうした「道徳」を失った家庭がおちいる陥没です。

しかしそれは勝者の論理でもあるのです。

低所得化が長引き常態化するにつれ、さらに無貯蓄世帯が増えていくでしょう。

社会の構造的分裂がはじまっているのです。
分裂国家先進国アメリカは僕たちの未来でもあります。
『わたしには家がない ハーバード大に行ったホームレス少女』(竹書房)のなかで、ローラリー・サマーはこういっています。


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“貧困は、たとえれば地球上に人間を縛りつけている重力のようなもの。重力があるために人間は鳥のように空高くはばたけない。それと同じように貧しい者は、いやおうなく底辺の暮らしに引きよせられてしまうのだ。(P.11)”

「格差」意識は絶対不平等感覚がうみ出すものです。

この国の若者は、「正社員」就職戦線から脱落すれば、目先賃金に差がつくだけではおさまらないことを知りつくしています。
アリ地獄にはまって抜けられない深い穴をのぞき込み、不安を抱えて生きています。
生涯貧困がつきまとうことに苛立っています。

絶対不平等感覚です。

人間を縛りつけている重力です。

絶対不平等感覚は、この国を暗い時代へ運び込む、情動の根源となろうとしています。
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