2012-01-31 Tue 11:08
誰に読んでもらいたいかターゲットをタイトルに打ち出しているのが、おちまさと本田直之『25歳からのひとりコングロマリットという働き方』(大和書房 2012年1月)。
帯に「20代が生き残るための思考法」とあるのが、瀧本哲史『僕は君たちに武器を配りたい』(講談社 2011年9月)。 ともに若者向けのビジネス本ですが、雲泥の差です。 後者については、すでに簡単な書評をのせています。 4つの顔ー『僕は君たちに武器を配りたい』ー とりあげるのは前者。 コングロマリットというのは、直接の関係を持たない多岐にわたる事業を組み合わせ展開している企業体のこと、多角化を目指す経営です。 対極にあるのが自社の得意な事業領域を明確にし経営の資源を集中的に投下する戦略、選択と集中の経営です。 2000年代中盤における日立と東芝の経営方針の対立が際立った事例としてあげられます。 これを若者の生き方に反映させたのがそれぞれの著書ですが、『25歳からのひとりコングロマリットという働き方』はお粗末な本です。 まず肝心の「ひとりコングリマリット」の具体例が乏しい。 スカスカの文面から、かろうじて事例らしきものを二つみつけることができます。 “不動産屋をやっているサーファーが、気づいたらサーフィン専門の不動産屋になってブランディングできた、というふうに、違う分野や違う業界の仕事をやるほうが、相乗効果が生まれやすいのです。(P.61)” “たとえばルイ・ヴィトンも、マーク・ジェイコブスというデザイナーや、村上隆というアーティストとコラボして成功しています。(中略) そうやって常に新しい風を入れているから相乗効果も生まれるし、常に一定の鮮度を保っていられる。ルイ・ヴィトンに起きていることはそういうことです。これを個人に当てはめてみれば、どんな道を選べばいいのか見えてきます。(中略)素晴らしいひとりコングロマリットが成立するでしょう。(P.97)” 二例とも、二人が主張する「ひとりコングロマリット」であるのでしょうが、コングロマリットではありません。 正反対の事例をもってきて、「ひとりコングロマリット」をでっち上げています。 不動産屋をやっているサーファーもルイ・ヴィトンも「直接の関係を持たない多岐にわたる事業を組み合わせ展開」してはいないからです。 むしろ本業を掘り下げ、選択と集中の経営に徹しています。 定価1,100円はぼったくり。 若者の不安につけ込んでの印税稼ぎはむごい商売です。 瀧本哲史『僕は君たちに武器を配りたい』は間違って二冊買っても元がとれます。
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