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『ふがいない僕は空を見た』
2011-07-25 Mon 13:24
小説を読まなくなった。
今年はまだ1册だ。
バロウズ『ジャンキー』だけだ。

窪 美澄『ふがいない僕は空を見た』を読んだ。


ふがいない僕は空を見たふがいない僕は空を見た
(2010/07)
窪 美澄

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きっかけがあった。
北野 一(JPモルガン証券日本株ストラテジスト)さんが次のように書いていた。
“最近、「日本は本当に貧しくなったんだな」と感じたのは、『ふがいない僕は空を見た』(窪美澄、新潮社)を読んだ時でした。高校生の斎藤君が主人公の小説です。母子家庭、貧困、いじめ、認知症、就職難、格差、階層社会、多重債務、自殺、コミュニティの崩壊……、日本の社会問題のカタログのような小説です。”

2、3年も前だろうか、小林多喜二の『蟹工船』が80万部に迫るほど売れ、ブームになったことがあった。

その頃、『私たちはいかに「蟹工船」を読んだか』という感想作文集に目をとおした。
小説の中に描かれいる階級対立の鋭い現場。
これが現代と対比して、受けとられていることにまずはがく然とした。

多喜二の『蟹工船』に対する個人的評価は、階級対立思想を勧善懲悪的に持込んだ観念小説。

当時、作家雨宮処凛さんの発言がきっかけになったようだ。
「蟹工船がリアルに感じられるほど、今の若い人の労働条件はひどい。派遣で働いて即ネットカフェ難民になる例もある。」
「アパートも敷金礼金ゼロの安い物件だと、家賃滞納があればすぐ追い出され、ホームレスになってしまう。こないだも、仕事を辞めてそのままホームレスになった元正社員に会いました。」

フリーター、日雇派遣、ネットカフェ難民・・・などワーキングプアの実態が『蟹工船』の描く世界と状況が酷似しているというわけであった。
現代の状況とリアルにリンクしている、という主張である。
『蟹工船』の評価とは別に、フリーター・派遣社員・請負社員など非正規雇用労働者が増え、低労働条件で酷使される外国人労働者達、自殺者の急増・・と貧困状況はすすんでいる。

『ふがいない僕は空を見た』の最終話「花粉・受粉」は、主人公である高校生の斎藤君のお母さんの話が中心だ。

斎藤君の父親、彼女の夫は夢を追い、自由な生き方を求め、妻子を養う能力も術も持たなかった。
そして、僕はこのくだりが好きだ。
“私が少しずつ助産婦としての経験を積み、力をつけ、この助産院を始めた年、彼は家を出ていった。しばらくの間、新生児が泣く声に混じって、卓巳の泣く声が部屋から聞こえてきた。”

夫と別れ、助産婦をして、一人で斎藤君を育てた。
母子家庭。
「経験を積み、力をつけ、この助産院」のぎりぎりの収入で子供を育てた。

斉藤君は、学校でも地域でも孤立していた。
主婦とコスプレ&不倫セックスの写真や動画をバラまかれ、陰湿で執拗ないじめにさらされていた。
母は「経験を積み、力をつけ、この助産院」で子供をとりあげ、息子を見守る。

“この窓からの風景が一瞬で消えるようなことが起こっても、私はこの世界に生まれてこようとする赤ん坊を助けるだろう。だから、生まれておいで。せんせー、とみっちゃんの声がした。はーい、と返事をしながら、べしべしと頬を両手で叩いた。”
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