

今年もまた、年末の一夜を大森ですごした。
となり町の蒲田で育まれた記憶が、体しみこんでいる。
師走の少しあわただしい雑踏に包まれると、妙に落ち着くのである。
大森西洋館に泊まった。明朝あけから年末年始の休業に入る。
大森北一丁目の飲屋街を入る。
「たから」は取壊され、空き地になっていた。
八十を超えたか超えないかのおやじが独りで切り盛りしていた。
かろうじてgoogleマップに往年の店構えが残っていた。思い出は色あせた看板の写真一枚になった。
地獄谷の二輪草も、ニュー二輪草にかわっていた。
大森駅山王口を出た池上通りのむこうに、天祖神社の森が迫っている。
参道となる急な石段をのぼる。
八景坂(池上通り)のけん騒と、裏手の瀟酒なマンションの静けさに挟まれ、立ちつくす。

